宝島社が発行する日本最大級のミステリーガイド『このミステリーがすごい!』は、1988年の創刊以来、日本のミステリーシーンを牽引し続ける権威あるランキングです。本記事では、長年にわたり愛され続ける「このミス」の歴史やランキング選出の仕組み、国内部門・海外部門の歴代受賞作の傾向から新人賞である「このミステリーがすごい!」大賞の最新動向まで、ミステリーファン必見の情報を徹底的に紐解いていきます。
『このミステリーがすごい!』の誕生背景と歴史的ルールの変遷

『このミステリーがすごい!』は、1988年から宝島社の『別冊宝島』の一企画としてスタートした、歴史あるミステリー小説のブック・ランキングおよびガイドブックです。業界内での略称として親しまれている「このミス」は、創刊編集者である石倉笑氏が当時の他誌年末企画「傑作ミステリーベスト10」に対して抱いていた違和感から、「本当にフェアで信頼できるミステリーランキングを作りたい」という思いを込めて企画を立ち上げたのが始まりとされています。
長年にわたり日本のミステリー文化の羅針盤として機能してきた同誌ですが、時代とともにその制度や仕組みも柔軟にアップデートされてきました。特に大きな転換点となったのは、公平性を期すために長年維持されてきた「宝島社の自社作品はランキング対象外」という内規の改定です。2021年版からは、宝島社からの刊行物も投票対象に含まれるようになり、近年の多様化するミステリー市場の実態により即した、フラットで精度の高いランキング選出が行われる環境が整えられました。
ランキング選出の仕組みと国内・海外部門の特徴
「このミス」の最大の醍醐味は、ミステリー作家、評論家、書店員、翻訳家、そして熱心な読者層を含む多様な投票者による「投票形式」を採用している点にあります。単一の審査員の主観に偏ることなく、プロの目線と一般読者の熱量が絶妙に交差するシステムが構築されているため、世の中のトレンドや真に支持されている傑作がダイレクトに反映される仕組みとなっています。
ランキングは大きく「国内部門」と「海外部門」の2つに分かれており、それぞれ厳正な投票を経てベストテンが選出されます。国内部門では、社会派から本格ミステリー、新本格、パケ裏の仕掛けが光るエンタメ作品まで、その年の最前線を行く日本の書き手たちの競演が楽しめます。一方の海外部門では、世界各国で翻訳・出版された話題作がラインナップされ、日本にいながらにして世界最高峰のミステリー潮流を網羅できるのが大きな魅力です。
| 項目 | 国内部門 | 海外部門 |
|---|---|---|
| 選考対象 | 前年11月1日〜当年10月31日までに刊行された国内作家のミステリー小説 | 同期間中に日本国内で翻訳・刊行された海外作家のミステリー小説 |
| 投票者層 | 作家、評論家、翻訳家、書店員、ミステリー愛好家などの有識者 | 同上(海外文学に造詣の深い投票者を中心に選出) |
| 近年の傾向 | 社会派、新本格、日常の謎など多様なジャンルの傑作がランクイン | 翻訳ミステリーの多様化を受け、欧米以外のグローバルな作品も注目 |
新人作家の登竜門「このミス」大賞の創設と最新動向
ランキング形式のガイドブックとしての役割に留まらず、「このミス」は日本のミステリー界の未来を担う新たな才能の発掘にも大きく寄与しています。2002年からは、次世代を担う新人作家の長編作品を広く一般から募集する『このミステリーがすごい!』大賞(このミス大賞)が創設されました。
企画者である茶木則雄氏らによって立ち上げられたこの新人賞からは、デビュー以降、日本文壇の第一線で活躍する数多くの人気作家が誕生しています。大賞受賞作だけでなく、隠れた名作を発掘する「隠し玉」としての文庫化作品なども読者の間で高い評価を受けており、エンターテインメント小説の新しい地平を切り拓くインキュベーション(育成)機能として、現在も業界内外から絶大な注目を集め続けています。
親しみやすいメディア展開と黒猫探偵「ニャームズ」の存在感
シリアスで本格的なミステリー評論やデータ分析が並ぶ誌面やWEB展開の中で、独特の緩急と親しみやすさを添えているのが、2009年から登場している公式キャラクター・黒猫探偵の「ニャームズ」です。重厚な謎解きや緊迫感のあるランキング解説の合間に登場し、読者の案内役としてガイドブック全体に愛される親近感をもたらしています。
シリアスな文学批評やランキングの正確性を担保しつつ、親しみやすいビジュアルや分かりやすい編集アプローチを両立させている点こそが、長年にわたって幅広い世代のミステリーファンを魅了し続け、国内最大級のミステリーガイドとしてのブランドを確立できた大きな要因と言えます。
【このミステリー がすごい】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ランキングの投票には一般の読者も参加できるのですか?
A1:ランキングは主にミステリー作家、評論家、翻訳家、書店員、そして熱心なミステリー愛好家ら選ばれた有識者・投票者による投票形式で決定されています。誰でも直接投票できるわけではありませんが、投票結果をまとめたガイドブックは毎年一般の読者に向けて広く販売されています。
Q2:宝島社の自社作品もランキングの対象になりますか?
A2:かつては公平性を期すために宝島社の自社刊行物はランキング対象外とされていましたが、ミステリー市場の変化や選考の公平性・フラットさを重視する観点から、2021年版以降は宝島社の刊行物も投票対象に含まれるように改定されています。
Q3:「このミス」大賞と通常のランキングは何が違うのですか?
A3:「このミス」大賞は、プロ・アマ問わず広く未発表の新作小説を募集する「新人賞」です。これに対してランキングは、前年1年間に日本国内で発表・刊行された既存のミステリー作品の中からベスト10を決める投票企画であり、それぞれ目的と性質が異なります。
まとめ:今後のミステリー界における「このミス」の役割と展望
『このミステリーがすごい!』は、単なる1年の総決算としてのブック・ランキングに留まらず、国内外の優れたストーリーテリングを発見・評価し、新たな才能を世に送り出すプラットフォームとして機能してきました。投票ルールの時代に応じたアップデートや新人賞の継続的な開催を通じて、日本のエンターテインメント文化の質的向上に大きく貢献しています。
多様化する現代のメディア環境や読書スタイルの中でも、信頼できる羅針盤としてミステリーファン必携のガイドであり続ける同誌は、今後も私たちの知的好奇心を刺激し、数多くの新しい名作との出会いを提供し続けていくことでしょう。